脂質異常症とは血液中に含まれる、「コレステロール」や「中性脂肪(トリグリセライド)」の濃度が慢性的に高い状態のことをいいます。
脂質異常症に自覚症状はほとんどありません。そのため、知らないうちに脂質異常症が進行して、突然心筋梗塞や脳梗塞に襲われることが少なくありません。
脂質異常症は、「家族性高コレステロール血症」のような遺伝性のものがありますが、大部分は生活習慣が原因となることが多いです。そのため、脂質異常症にならないように普段から生活習慣に気を付けましょう。もし職場での健康診断や特定健診などで脂質異常症の疑いがあると診断された場合には、できるだけ早く病院へ行き医師の指導を受けることが大切です。
脂質異常症には大きく分けると「高LDLコレストロール血症」「低HDLコレステロール血症」「高トリグリセライド血症」の3つのタイプがあります。
悪玉(LDL)コレステロールが多すぎる状態で、脂質異常症で最も多くの人にみられます。悪玉(LDL)コレステロールはコレステロールを末梢組織まで運ぶ働きがあり、悪玉コレステロールが多いと血管の壁に入り込み動脈硬化を引き起こす原因となります。
善玉(HDL)コレステロールが少なすぎる状態です。善玉(HDL)コレステロールは余分なコレステロールを回収する働きがあります。善玉(HDL)コレステロールが少ないと、余分なコレステロールが十分に回収されなくなり、コレステロールが溜まりやすく動脈硬化のリスクが高まります。
中性脂肪が多すぎる状態のことです。中性脂肪は活動のエネルギーになるほかに、保温や外部からの衝撃を和らげる働きがあります。中性脂肪が多すぎると脂肪肝、肥満に繋がり動脈硬化のリスクが高まります。さらに中性脂肪が多すぎると悪玉コレステロールが増えやすいこともわかっています。
脂質異常症の診断基準は、空腹時採血をして脂質値を調べます。
「空腹時」とは、カロリーがない水分以外のものを10時間以上絶食した状態をいいます。境界域高LDHコレステロール血症、境界域高non-HDLコレステロール血症を示した場合は、高リスク病態がないかを検討し治療の必要性を考慮する。
(日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診断ガイドライン2018年)
non-HDLコレステロールとは、総コレステロール値からHDLコレステロール値を引いたもので、動脈硬化のリスクを総合的に評価できるといわれています。ここには、LDLコレステロールだけではなく、中性脂肪が豊富なリポ蛋白や脂質代謝異常によって現れるレムナントなどが含まれています。
最もリスクが高いのが、動脈硬化症です。脂質異常症を放置していると、LDLコレステロールが血管の壁に溜まり動脈硬化になりやすくなります。動脈硬化は、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、間欠性跛行、解離性大動脈瘤などの命にかかわる病気の発症リスクを高めます。
脂質異常症と同じ生活習慣病である高血圧や糖尿病との合併が起こると、動脈硬化のリスクはさらに高くなるため自覚症状が全くなくても、定期的に検査を受けて早く治療を始めることが大切です。
その他にも、健康診断で脂質異常症の疑いがあると診断された方は、できるだけ早く受診することをおすすめします。
脂質異常症の治療には、食事療法・運動療法が基本となります。それらを行っても改善がみられなかった場合は、医師の判断により薬物療法が行われます。また、喫煙は脂質異常症の発症リスクを高めるので、禁煙しましょう。
脂質異常症の治療目標値は、人によって異なっているので医師の指示に従ってください。
また、肥満気味の人は、標準体重を目標にして減量をする必要があります。減量は脂質異常症だけではなく、動脈硬化を促進する高血圧や糖尿病の改善にも効果的です。
毎日30分以上の有酸素運動を行うことが大切です。ワーキングや軽めのランニング、水中ワーキングなどをすることをおすすめします。
運動をする時間を取るのが難しい方は、日常生活でエレベーターやエスカレーターを使わずに階段を使う、自転車で駅まで行っていたのを歩くようにする、など日常生活で少しでも運動をするようにしましょう。
現在、治療中の病気がある場合は、どのような運動を行ってもよいのか医師に相談して決めてください。運動が治療中の病気に悪い影響を与えてしまうこともありますので、無理をしないようにしてください。
食事療法や運動療法を行っても改善が見られない場合は、医師の判断で薬物療法を行います。コレステロールや中性脂肪を下げる薬は数多くあるため、医師の指示に従ってください。
脂質異常症の薬は、基本的には一生飲み続けなければいけませんが、高齢になると体質や生活習慣が変わって、薬を飲まなくてもよくなることもあります。