糖尿病は、体を動かすためのエネルギー源であるブドウ糖を取り込めなくなり、血液中の糖の濃度が高くなる病気です。
インスリンは、血液中のブドウ糖を細胞に送り込んでエネルギー源にしたり、脂肪やグリコーゲンという物質に変えて蓄積したりする働きがあります。何らかの原因で、インスリンの量が不足したり、働きにくくなったりした状態が糖尿病です。
糖尿病は主に2つのタイプがあります。Ⅰ型糖尿病は突然発症し、Ⅱ型糖尿病は徐々に症状が現れます。Ⅱ型糖尿病で、症状が自覚できるようになったときには、糖尿病がかなり進行していることが多いです。
糖尿病の症状は、のどが渇く、頻繁に尿意を催す、体重が減少する、疲れやすくなるなどです。感染症にかかりやすくなる、傷が治りにくくなるなどの症状も現れます。
これから説明する3つのうちどれかに当てはまると、糖尿病と診断されます。
以下のいずれかが確認された場合は糖尿病型と判定されます。
血糖値 | 空腹時血糖値126mg/dL以上 |
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75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で2時間値200mg/dL以上 | |
随時血糖値200mg/dL以上 | |
HbA1c (NGSP値) | 6.5%以上 |
HbA1c:赤血球のヘモグロビンにブドウ糖が結合しているものの比率。過去1~2ヵ月の血糖値のコントロール状態を反映しています。
血糖値とHbA1cが同一採血で、それぞれ糖尿病型が認められたら1回の検査でも糖尿病と診断されます。
この2つの症状のどちらかが現れていたら、検査で1回でも血糖値の糖尿病型が認められたら糖尿病と診断されます。
現在の血糖値やHbA1cの値が糖尿病型を満たしていなくても、過去に糖尿病と診断された記録がある場合は、糖尿病として対応します。
糖尿病にはまだなっていないものの、一歩手前の状態にある場合、糖尿病予備群と診断されます。以下のいずれかが確認されたら境界型糖尿病と判定されます。
血糖値 | 空腹時血糖値110~125mg/dL |
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75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で2時間値140~199mg/dL | |
HbA1c (NGSP値) | 6.0~6.4% |
糖尿病を放置しておくと様々な合併症が起こる可能性が高まります。代表的な合併症は次の通りです。
動脈の壁が硬くなったり、血液が流れる部分が狭くなったりして血液の流れが悪くなった状態です。動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こすリスクが高くなってしまいます。
網膜の血管が詰まったり破れたりして、視力低下や視野が狭くなってしまう病気です。成人が失明する主な原因となっています。
腎臓の機能が低下していき、進行すると人工透析を受けなければいけない状態になります。人工透析を受けている人の主な原因となっています。
神経障害が起きたときの症状は様々で、手足のしびれや痛みをはじめ、胃腸機能の障害や眼球運動の障害、排尿障害、発汗障害など多岐に渡ります。
そのほかにも、認知症や歯周病など様々な合併症を引き起こすリスクが高くなります。
糖尿病は大きく、「Ⅰ型」「Ⅱ型」の2種類に分けられます。
若いうちに発症する方が多く、膵臓で作られ血糖値を下げる働きがあるインスリンの分泌量が少なくなってしまい、血糖値があがってしまう糖尿病です。
Ⅰ型糖尿病になってしまう原因はわかっていませんが、免疫反応が正常に働かないことで、インスリンを分泌する膵臓の細胞を破壊してしまうために起きると考えられています。
この場合は、インスリンの分泌量が少ないため、インスリン注射が必要になります。
中年以降に発症する方が多く、インスリン分泌量低下や、インスリンが効きにくくなり血糖値があがってしまう糖尿病です。遺伝的要因と生活習慣が関係して発症すると考えられています。
ほかに糖尿病の種類は、病気や薬による影響で発症した糖尿病や、妊婦が発症する妊娠糖尿病などがあります。
糖尿病は一度発症してしまうと、完治できないと考えられています。そのため、糖尿病治療の目的は、血糖値をコントロールすることで糖尿病の進行を抑え、合併症の発症リスクを低下させることにあります。
糖尿病の治療は大きく分けると、食事療法と運動療法、薬物療法の3つに分けられます。 最初は、食事療法と運動療法で血糖値のコントロールを図ります。
食事療法は糖尿病治療に不可欠で、ベースとなる治療です。食べ過ぎずにバランスの良い食事をとる必要があります。また、朝食・昼食・夕食を規則正しく取り、よく噛んでゆっくり食べるように心がけてください。就寝3時間前には夕食を食べるようにしましょう。
食物繊維が豊富な野菜やきのこ類、海藻類などは、血糖値の上昇を抑えてくれると言われているので、食べ過ぎはよくありませんが、食事に取り入れてもよいでしょう。
最初に、どのような運動をしてもよいのかを主治医に相談してください。行ってもよい運動は個人差があります。不適切な運動をすると、かえって健康を害する可能性があります。
運動療法は、有酸素運動がおすすめです。ウォーキングや軽めのランニングなどを30~60分行いましょう。週3~4回は運動するように心がけてください。
また、筋肉にダンベルやチューブなどで一定の負荷を加えるトレーニングも血糖値のコントロールには有効であると言われています。
食事療法と運動療法では、血糖値のコントロールが難しい場合、薬物療法を行います。血糖降下薬を服用しますが、どの薬を服用するかは主治医の判断に従ってください。